もうどれくらい前なんだろう、井賀さんと初めて会ったのは。まだビクターで働いている頃、ロッキンオンに掲載されていたモノクロのポートレイトが井賀さんとの最初の出会いだったと思う。僕から連絡をして、ポートフォリオをリースして何度か仕事でプレゼンしたのだけどポートフォリオのガチンコぶりに尻込みしてしまうクライアントが多かったのを覚えている。その都度、《僕の力不足で良さが伝えられなかった、すみません》と伝えると《気持ちが嬉しいよ、ありがとう》といつも言ってくれた気がする。多分そんなやりとりを数回した後に直接会う機会があったのだと思う。直で会った井賀さんにはビビった。まずは面構えだ。もう雄(オス)全開というか、失礼を承知で言うと、《メチャクチャおっかねぇ顔じゃんかこの人!》 自分の器の小ささを実感したのが昨日のようだ。結局井賀さんとは仕事をご一緒する機会もないまま、共通の友人たちと一緒に総合格闘技のPPVを飲み屋で見る友達になっていった。今考えると面白いメンバーで、俺に五木田さん、永戸鉄也さんにPLUG IN関口さん、当時FISH DESIGNだった落合さんに編集の星野くんもいた。当時格闘技経験があるのは井賀さんだけだった事もあって、ジョシュがノゲイラに膝十字を極めている時にはアルコールも入っていたこともあり《そこはケツ蹴るんだよ、ケツ!ケツ蹴ろって!》と興奮しながら、対峙して座っていた俺と五木田さんの膝をガンガン蹴り出したのはよく覚えている。あの頃は今より若くて無責任で今同様、楽しかった。
その後、僕の仕事がビジュアル制作からタコマの仕事が増えるにつれ数年疎遠な時間が続いたけど僕の友人が井賀さんのマネージメントをしている時期があったり、FBで繋がったりしてそんなに会ってない時期があるような気がしていなかった。山の写真集を出したり、昨年からはこの本のためにブラジルへ向かった事はSNSを通じて知っていた。勿論前作も持っているので、この本の出版は個人的にも楽しみにしていた。そういえば去年は居酒屋で偶然隣の席になったりしたこともあった。そして先日、ようやく入手したこの本を土曜日に一気読み。
PRIDEやUFC、格闘技を知っていると100倍楽しめるけど、そうでなくとも秀逸なドキュメンタリー、紀行文として、また一人の写真家の作品としても素晴らしい。井賀さんが前著から時間を経て変化したように、時を超えて再開するペケーニョや名もない柔術道場の師範代。オリンピックやワールドカップを経て変節するブラジル社会と、それでも変わらないモノ。FBを通じて近年の井賀さんを知っていた気がしたけど、全然だった。やっぱり燃えるように生きる人は格好いい。
この本、オススメです。
《お前そこが一番大事だろ!》って部分ですが、当然写真も素晴らしいです。過去のアーカイブから、近年の写真まで。面白いのはブラジル人がこの10年ほとんど変わっていないように見える点。壮大な大自然や殺伐とした郊外の風景なんかも印象的だけど、歓喜、怒り、悲しみや恐怖。感情を剥き出しにしているブラジル人たちの写真がちょっと怖くなるくらい迫ってくる。久しぶりに井賀さんに会いたくなった。