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1/29_ANTONIO DESIGN SERVICE


僕が鵜飼さんと五木田さんに出会う直前までANTONIO DESIGN SERVICE名義で二人での活動(主にデザイン)をしていたのですが、僕が出会った2000年代初頭には既にユニットでの活動はしていなくて、その屋号は鵜飼さんが自然と引き継いでいたんだと思う。五木田さんも鵜飼さんも別々では会う機会があるのだけど、2人が一緒の場に立ち会う事がそうそうない。なので、鵜飼さんからは「智央が来週うち来るよ」と伺い、五木田さんからは「ダイちゃんの家行くよ、ナベちゃんも来れば?」なんて声をかけられたらそりゃ嬉しい。このタイミングで話しておいた方がいい(っつーか話さないとマズい)案件もあったりしたので各所にお詫びしつつ乱入してきました。久々にテイさんにもお会いしたし、初めましてのアレックスともご挨拶。久しぶりに仙川は住んでいた10年前とだいぶ様相は変わったけど相変わらずいい空気の街だったな。


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この日もなんだかいい夜だった(記憶があやふやだけど)。

おしまい。




# by tacomafuji | 2020-02-01 14:51 | 日々雑感 | Comments(0)

1/28_新宿人間交差点


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19時過ぎまで原宿のビームスにお邪魔して打ち合わせをした後、タクシーぶっ飛ばして新宿へ。運良くぼるがで席がとれて、ビールがきたところでPLUG IN GRAPHIC関口さん登場。年に1度か2度しか合わない上にもう仕事は10年以上ご一緒していないけども定期的にお酒を一緒に飲む時間がなんとも心地よい大先輩。この晩もぼるがと辰乃屋で言える話から絶対に言えない話まで。いつまでたってもトップランナーな尊敬する先輩だ。

そうそう、ぼるがで偶然ゴリと遭遇。こんだけ広い東京の、星の数ほどある居酒屋なのに偶然会ってしまう哀しさ。東京インディアンズ・島さんを紹介してもらい、握手した際に手を添えたら指輪のスタッズに思いっきり自分の手を刺してしまった。相変わらずマナーの分かってない自分です(45歳)。

この日もなんだかいい夜だった。

おしまい。


# by tacomafuji | 2020-02-01 14:41 | 日々雑感 | Comments(0)

1/27_久しぶりのスタジオ


あんまり大きな声で言うと恥ずかしいのだけど、自分の仕事でスタジオに入るのはもしかしたら5年ぶりくらいだったかも。それくらい久しぶりにスタジオで撮影。やっぱり現場感なるものは常に身にまとってなくてはいけないなと痛感。撮影はさっくり終えて打ち合わせからタコマもしてもらう。みなさん感謝。

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ホントみんなに感謝ね。

打ち合わせ後、磯くんに忘れ物を届けてから恵比寿でキャップの打ち合わせ。ズルズルに伸びてしまいもう旧正月もへったくれも関係ないタイミングになってしまったけど、慌てても何してもしょうがない。しっかりかっちりやりましょう。ということで、キャップのリリースは確実に初夏までずれ込みます、押忍。

おしまい。





# by tacomafuji | 2020-02-01 14:34 | 日々雑感 | Comments(0)

喝采・ちあきなおみの凄みに震える




# by tacomafuji | 2020-01-31 23:46 | NOW PLAYING | Comments(0)

1/26_日曜日


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1日のんびりさせて頂きました。




# by tacomafuji | 2020-01-27 23:08 | 日々雑感 | Comments(0)

1/25_週末でも渋谷に行った自分を褒めたい


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最終的に目的の半分も回れなかったけど、EYヨさんと神山さんの展示にスライディング。
生地屋と古着屋、古本屋をチェックしていたため永戸さんと田附さんの展示は断念、残念。



# by tacomafuji | 2020-01-27 22:52 | 日々雑感 | Comments(0)

1/24_HAPPY HOUR新年会


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午前中久々に五木田さんの道場にお邪魔して復刻10周年Tシャツと夏に延期になった某企画のサンプルTシャツを納品。個展の準備が一段落ついたタイミングで小一時間近況報告と雑談。なんか久しぶりだったなー。お土産も頂いてしまい恐縮。一度家に帰ってから事務所へ。ちょっと前になんとなくノリで買ってしまった505の66前期の裾上げデニムをピックアップしてから集中して事務所作業。

夜は渋谷某所で俊太郎、西原女史、途中参加のゴリとHAPPY HOUR新年会。
五木田さんに教えてもらったお店で初めて行ったところだったけど噂にたがわぬ具合のよさ。
ここはレギュラー化決定&今回こそはあんまり人に教えたくない。

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2件目の店もよかったし、ちょっと気を緩めて食べながらのんでしまったのもあり翌朝はノー二日酔い。やっぱりしっかり食べてよく寝れば二日酔いなんてこの世に存在しないんだな(絶対に二日酔いはただの寝不足説推進派)。

金曜日の夜に渋谷へ繰り出す自殺行為でしたがなんともいい時間だったぜ。

おしまい。




# by tacomafuji | 2020-01-26 13:34 | 日々雑感 | Comments(0)

1/23_10年目?11年目?


入籍から11年、挙式から10年目の結婚記念日でした。
関口さんにスピーチを無茶振りしたり、猪木酒場での99パーセント飲み会ノリの二次会も10年前。我ながらよく喰えてここまでこれたもんだと関心してしまう。普段は自宅での食事以外はだいたい居酒屋なのだけど、さすがにちょっといい食事をしようって事で近所で評判のお寿司さんへ。

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カウンターだけで我々含めて3組のみ。大将が美しい所作で唸るほど美味い鮮魚を小気味好く提供してくれる。ただまぁ何故か会話がスイングしない。文化が違うってこういう事なんだろうな。俺は気持ちよく美味しい料理を食べたいだけなんだよ。今年の俺はグチグチ言うのを減らしたいのでまぁいいんだけど(結局言ってる)。

結果、少し消化不良だったので駅前の1人でふらっと行く居酒屋でチューハイとつくねで〆の一杯。
やっぱり客筋のいい居酒屋はいいよな。ざっくばらんで賑やかだけどちゃんと品がある。

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帰宅後、酔った私の不祥事で機嫌を損ねてしまいましたが引き続きどうぞ宜しくお願いします。

(あまりにもムカついたららしく、朝方5時すぎに寝言で「ふざけんなって言ってんだろ!」と怒鳴りだしたので俺は飛び起きて「大丈夫?」と揺すって起こしたのだけど夢の中でもまだ怒っていたそうで、震えるながら怒ってたから真剣にエクソシストみたいな事であんだなー実際。なんて思ってたら今度は俺がそこから寝れなくて本日微妙に寝不足なのは自業自得ゆえ誰にも言いません)

おしまい




# by tacomafuji | 2020-01-24 16:32 | 日々雑感 | Comments(0)

2020も宜しくどうぞ



昨年中盤くらいから手がつけられないような忙しい波が断続的にくるようになると同時に、インスタの手軽さとインタラクティブな使い勝手(良くも悪くも)が心地よくなってすっかりブログの更新をしなくなっていた。もともとチェックする人のためにやるというよりは限りなく備忘録として、自分の居場所確認として始めたようなものだったので、状況を考えると自然にフェイドアウトするのも当然なのかな、と自分に言い聞かせていました(というか単純に仕事して飯食って寝てだけで毎日が終わっていた)。そんな状況は全然気にしていなかったのだけど、先日あぶさんの13周年で会った鈴木聖(普段は鈴木くんと呼んでますがここでは敬称略)に「渡辺さんはインスタ辞めてブログにシフトした方がいい」みたいな助言をしてもらい、酔っていたので微妙に忘れていたのだけどさっきフと思い出してその勢いのまま、ただただ久々にブログを書いてみます。

あぁあれだ、すっかり1月も下旬だけど2020年もスタート。
まだ公にできないプロジェクトが複数進行中ですが、春には新作のTシャツもリリースするし、昨年に続き今年も条件が合って呼んでもらえるならば地方や海外にちゃんと足を運ぼうと思います。あとは健康管理と体調維持。もうバッチリ中年なので格好ばかりつけてる場合じゃないです。あと、今年こそはもうちょっと人に優しくなりたい、もう少し大事な
人のために行動したいと思います。
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新日のちゃんこ風景と国際のちゃんこ風景。
新日のワイワイ体育会系の飯会に対して、国際のどこからどうみても家飲み的雰囲気。
こんなの10年くらい前の五木田さんのアトリエの風景と完全一致じゃないか。
最近めっきり酒が弱くなった、というか呑むと記憶が不確かになるようになった。
健康にガバガバガハガハ呑みたいね。

今年も皆さん宜しくどうぞ。




# by tacomafuji | 2020-01-23 13:16 | 日々雑感 | Comments(0)

HANDS / 拍手喝采販売のご案内


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hands / 拍手喝采 designed by Ryohei Kazumi

COLOR : BLACK / WHITE

SIZE : S~XL

PRICE : 5,616 (tax in)


6月末に開催したOPEN OFFICEでPOP UP STOREを展開してくれたENTERTAINMENT。その際に会場で販売したhands/拍手喝采 Tシャツですが、遂にようやくお待たせしました、若干数ですがHPにて販売開始致します。なんのことだかさっぱり分からないアートワークと、もう完全に狂っているとしか思えない狂気の熱量&ボリュームのサイドストーリー。僕がタコマフジを始めた時のモチベーションを剥き身で突きつけられているようで、気分はヒリヒリしています。油性プリントのプチプチした肌触りが気持ち良いのも個人的には高ポイント。以下のテキストも必読です。是非宜しくどうぞ。


販売開始は8月10日土曜日21時からTACOMA FUJI RECORDS HPにて。



hands / 拍手喝采

あなたにとってピアノが大事なことは分かっている。でもね、それが何であれ、辛 くなった時は逃げてもいいのよ。いつ辞めたって構わない。そして、やり直すことだ って出来るの。それは誰も強制することでは無いの。

リサはそう言ってくれた母に、辞める決断がどんなに怖いか。自分にひとつしかな いものを辞めるという決断をしたことのない母さんにはわからないと、そう喚き散ら した時の、母の寂しそうな笑みを忘れられないでいる。母の言葉は確かに優しくて、 正しかった。でも、その言葉で安らぐほど、単純で安い女じゃないというプライドが リサにはあった。

リサ・エウトイは、未来のスター発掘と銘打ったテレビ番組に5歳当時、天才ピア ニストの触れ込みで取材を受け、その圧倒的な演奏力と、愛らしいルックスから話題 となった。出演する演奏会は完売を続け、芸能界入りを果たし、スター街道を駆け上 って行った。有り触れた話であるが、成長と共に、世間から興味を持たれなくなり、 成人を過ぎた頃には誰からも見向きもされなくなっていた。若かりし頃の成功体験は、 リサの人格形成に影を落とした。一度知ってしまった栄光は、プライドを肥大化させ、 若い心に贅肉をつけた。新たな目標を見つけられず、心の中の理想と、鳴かず飛ばず の現状との乖離を、世間の見る目がないのだと言い訳をつけて、逃げ出さない振りを 続けていた。そんな折に、母から投げ掛けられた言葉。それは、確信を突いていた。 今でも、昨日のことのように覚えている。その時の喧嘩が、母との最後の会話になっ た。それはもう、十年も前の話だ。

この国の冬は長い。止むことのない雪で、街は時間が止まったように静まり返って いる。全てを白く飲み込んで、みんな、何処かにいってしまったように感じる。顔を 刺す北風で、縮む身体を震わせ、リサは目当ての建物へ急ぐ。藍色の壁面のビルに、 目当ての店がある。やっとの思いでたどり着き、重たい扉を開けると、暖かな空気と 喧騒が迎えてくれる。静から動へ、扉一枚隔てて、分断された空間を行き来する時の コントラストが、生きていることを実感させる。いつものように席は埋まっている。 開店当初は真紅であったろうカーペットは踏み締められて、濁った黒が目立っている。 壁際にある、いつものテーブルに座り、厚手のコートを脱ぐ。リサはレストラン『ア ンコール』で週に一度、演奏をしている。馴染みのウェイターと挨拶をして珈琲を貰 う。これを一杯飲んだら仕事の時間。大きな店では無いが、ここでピアノを弾くのが 自分の精一杯。手を開いては握り、繰り返して、強張りが無いことを確認すると、ピ アノの前へ向かう。自分が自分でいられる限られた時間が始まるのだった。

何時もの客層は、何時もと同じ疎な拍手で応えてくれた。リサの演奏も何時も通り。 何時ものテーブルに戻ったところ、自分の席に見知らぬ女性が座っていた。長い黒髪 は緩くカーブし、大きくつり上がった眼が印象的だった。女性はリサを見つけると、 微笑んでから簡単な挨拶をし、正子と名乗った。 「いい演奏ね、迷いがあるけど冬に聞くにはちょうどいい」

見透かしたような視線を感じたが、不思議と不快感は無かった。 「あなたがリサね。リサ・エウトイ」頷くリサ。 「やっと会えた。さあ、座って。クッキーがあるの、食べながら話しましょう。積も る話があるから」

正子は、勝手に話を進めると、鞄の中から大ぶりのクッキーと花柄のティーカップ を2つ取り出し、テーブルに広げ出す。まるで、ここが自分の家であるかのような振 る舞いだったが、ウェイターは気にしていないようだった。リサのお気に入りの席は、 正子の用意したティーセットでいっぱいになり、いつもとは別空間のようだった。

立ったまま呆けていたリサは正子に促され、席に着く。その様子を見て、正子は満 足したのか、また、優しく微笑んだ。向かい合って正子を観察すると、薄い化粧だが、 深く黒い瞳が際立って見える。黒髪も漆黒そのもので、艶やかに光り、肩甲骨の辺り まで伸びていた。パンジーだろうか、花の形が連なったネックレスに、刺繍の入った 黒のゆったりとしたコート。若くは見えるが50代後半くらいだろう。記憶を遡って みるが面識は無いはずだ。 「あなたは忘れてしまったかもしれないけど、私はあなたを知っているわ。本当は、 あなたの演奏を聴いて帰るつもりだったのだけど、懐かしくなってしまって。つい、 声をかけたのよ」リサの視線から察したのか、正子が会話を切り出した。 「あなたは、もう一度、ピアノに本気になるべきね。あなたに才能は無いけど、あな たの血はまだ諦めてないように思うわ」

触れられたく無い話題だった。それに、全てを知っているかのような態度が癪に触 る。

「あなたは私を知っていると言う。何時です、何処で会ったのでしょう」 「そのことについては、いずれ時が来たら話しましょう。過去よりも、今はあなたの これからについての方が大事。その腕、錆びつかせたままで良いのかしら」

リサの眉がピクリとつり上がる。 「私はここでピアノを弾ければ幸せですし、錆び付かせているつもりはないです」

気丈に振る舞うリサに、正子はゆったりと時間をかけてから「嘘」とだけ言った。

正子の瞳は吸い込まれそうなほどに黒い。心を読んでいるに違いないとリサは思っ た。

「がむしゃらになって、うまくいかなかった時が怖いのかしら」

ピアノを始めた頃、真綿が水を吸うように、なんでも吸収できた。言われたことはす ぐに出来るようになったし、出来るようになることが嬉しくて堪らなかった。それに、 自分の演奏で喜んでくれる人がいる事は、純粋にとても嬉しかった。ピアノ椅子の高 さにベッドを設置してもらい、一日中、飽きるまで弾き続け、疲れたらそのまま横に なった。リサの生活は常にピアノの前にあった。誰よりも上手に出来るという、根拠 のない自信で溢れていたし、実際に、出来ると思ったことは直ぐに出来るようになっ た。リサにとってピアノを弾くことは息をするのと変わらない、当たり前のことだっ た。だから、躓き、その当たり前が、当たり前では無くなった時、何をすればいいの か、目の前は真っ暗になった。がむしゃらになる?そんなこと、当たり前にやって来 た。それでも上手くいかなくなった時、評価される事もなく無視されて、進むべき道 筋が何処を向いているかわからなくなった時、人はどうするのだろうか。友人もなく、 ピアノだけしかなかった自分は、寄る辺を失ってしまった事に気付かぬ振りをして、 それでも、必死に足掻き続けた結果が、この店で週に一度の演奏なのだ。それを否定 する権利があるのかと、正子を睨みつけていた。

「あるわ」

正子はリサを見もせずに、あっけなく答えた。

「あなたには技術はある。でも、問題なのは心。迷ったまま、空っぽのままでいると、 心はその隙間を埋めようとする。あなたは自身を信じきれなくなっているから、他人

の言葉や行動に目移りして、誰かの言葉で心を埋めようとしてしまう。現に、私の言 葉で動揺しているのが良い証拠。あなたは過度に自分と他人を比べようとする。それ ではいけない」

しっかりと見透かされていた。 「どうやら、あなたは私を疑っているみたいね。それでも、あなたの歩みが止まって しまっているのは確かだわ。そうやって、寄る辺を失ってしまった時、それを自覚す ることが必要よ。そして、此処までの自分を糧としながら、その自分を否定しなくて はいけない。ただ、否定して反対のことをすればいいわけじゃない。なんであれ、自 分が今までやってきたことに答えはある。それを信じなくては」

正子の言葉は、あの煩わしさを凝縮した、母の正しい言葉に似ていた。母との思い 出は、喧嘩ばかりだった。あの煩わしい懐かしさが、正子から放たれる一方的な会話 にはあった。 「じゃあ、私に何をさせたいの。まさか、正論を言うために、私に会いに来たとでも 言うの

リサの問いに、正子は大げさな調子で立ち上がると、両手を広げて言い放つ。 「私はあなたの緩んだ螺子を締めに来たの。あなたの母から頼まれた最後の仕事を終 わらせる為に。あなたは信じていないでしょうけど、私に出来ないことは無いわ」

そう言い切る正子の瞳は、嘘を付いているようには見えなかった。

「なぜなら私は魔女だから」

リサは朽ち果てたアップライトピアノの前で茫然としていた。200年前に作られ たというピアノは、屋根や上前板がひび割れて、大きな亀裂が入っている。閉じない 鍵盤蓋には、弾痕のような無数の穴も空いていた。鍵盤は大きく波打ち、いくつもの 欠落が見てとれた。そして致命的なことに、ひとつとて、鍵盤から音が鳴ることはな かった。半ば強引に連れてこられた正子の屋敷で、リサはこの朽ちたピアノで弾ける ように成りなさいと言われ、立ち尽くしていた。使いこなすまでこの部屋から出られ ないと正子は告げ、実際に金網で遮られた部屋は独房そのものだった。考えるまでも なく、これは立派な拉致監禁だった。それでも、正子の言葉に動揺し、ピアノのこと を考えずにいられなくなっている自分は、もう、おかしな人間になってしまったのだ と思うと、不思議と冷静になった。

朽ちたピアノでの練習は、当然ながら難航を極めた。何せ、音が鳴らないのだ。何 を目的に練習するべきか、そこから考える必要があった。数日はピアノの前に立ち尽 くして終わり、半分も残っていない鍵盤を、ただただ叩きつけるように弾いて、1日 を潰すこともあった。どうにかピアノを直せないものかと大きく空いた亀裂から中を 覗いてみたが、混沌とした内部は見るも無残で、時間とやる気を無駄にするだけだっ た。

そうやって、数日が経った深夜、朽ちたピアノを眺めながら、ふとした拍子に、自 分に似ていると独り言を呟いていた。はたと我にかえると、やはり、ピアノは自分と 似ているように思えた。すると、どうにか、このピアノと友人関係になれないものか と考えるようになっていた。そこで、ピアノを綺麗に拭き上げる事から始める事にし た。内部を直すことは出来ないが、せめて、外側だけでも、大きく入った亀裂に、丁 度良いサイズの木材を当ててやり、無くなった鍵盤には、おもちゃの積み木を並べ、 錆びついたぺダルには靴下を履かせてやった。そして、そもそも無かった椅子の代わ りに、ベッドを運び入れて設置すると、ピアノは見違えたように見えた。

音が鳴ることは無いが、このピアノならば、自分の演奏が出来る。自分でも笑って しまう、可笑しな確信があった。その思いのままに、積み木で七色になった鍵盤を奏 でた。朽ちたピアノはリサの頭の中で、美しい音色を奏で始めた。そこからは、長年 の鬱屈とした想いを吐き出すかのように、時間に囚われること無く、演奏を続けた。 いつ寝たのかも記憶が曖昧なくらい、弾き続けたリサは、ピアノを弾く自分を俯瞰で 見ている感覚すらあった。俯瞰で見る自分は、小さく痩せ細って見え、独りで弾くの が可哀想なほどだった。ふつふつと湧いてくる、遣る瀬無い気持ちを振り払おうと、 自分の隣に座り、連弾してみることにした。カノンや花のワルツ、ラフマニノフと思 いつく限りの曲を、自分と二人で弾き続けることで、細い腕と腕が絡まり合い、寸分 の狂い無く、理想の音を奏でた。その時初めて、自分で自分を褒めてあげたい気持ち になった。自分を許すことが出来るかもしれない、そう思うと涙が止まらなかった。 全てはリサの頭の中で起きている妄想の産物にすぎない。しかし、確かにリサは自分 と連弾をし、そこには自らを許すに足る説得力があった。

「いい顔になったね」 朦朧とする意識の中で、誰かにそう言われ、肩を叩かれた気がした。それが自分だ

ったのか、それとも正子だったのか。もうわからなかった。

暗闇が広がるステージの上では、伸ばした指先が何処へ落ち着くのかわからない。 客席から聞こえる囁きは、重なりあって騒めきになっている。高い音の咳払いが遠く で聴こえる。客席とステージの間を分断する形で、金網や穴が無数に空いた壁面が設 置されている。金網には、蝋燭の灯りで薄ぼんやりと照らされたパンジーの花束が括 り付けられている。客席からは、照明の落ちたステージの様子は窺い知れない。リサ の指先がようやく鍵盤に辿り着き、優しく黒鍵をなぞる。始まりの鍵盤を見つけると 暗闇の中で瞼を閉じた。雑音が途切れる僅かな沈黙に合わせて、眼を開けると同時に 鍵盤を叩く。視界は変わらない暗闇の中。聴衆が静まり返る。

リサは本名では無く、hands と名乗るようになった。自分との連弾という経験が、大 きな転機となり、自分の中に内包されていた、苛立ちや苦しさを受け入れ、自分を許 すことに繋がっていた。

朽ちたピアノでの演奏を達成した後も、正子からは自動演奏する電子ピアノに、登録 されていない曲を閃かせるまで連弾させられたり、ドラマーのコンクールに音の出な い朽ちたピアノでエントリーし、打刻音だけで客を沸かせろといった無理難題を幾つ も出された。そして、その全てを退けるうちに、親子程、年齢の離れた正子との間に、 友情に似た感情が芽生えていた。それは、もはや叶わない母との和解のようで、心に 出来たしこりが、小さくなりつつあるのを感じていた。正子には何か、思惑があって 近づいたのだろうとリサは考えている。彼女との出会いはリサにとって天災みたいな ものだった。それでも、自分がこんなにも変わっていくなんて想像すらしなかった。 変わらぬはずの生活が、突然、転倒を起こす。それまでの見方が、正子との出会いを 境に一変した。終わりなき日常は緩やかに、しかし確実に変化している。リサ自身、 全てはそうやって変わっていくと、そう、気づくのに時間がかかってしまった。この 演奏が終わったら正子には洗いざらい喋って貰おうと思った。今日の演奏は一度きり。 全霊の演奏中にも関わらず、心は落ち着いている。眼を開けても、閉じても何も変わ らず暗闇だけが続く。それでも自分の隣には信じられる自分がいた。

鳴り止まない拍手の中、ステージを後にする。

私の魔女は、微笑んでクッキーを手渡して来た。


texi by Takaaki Akaishi





# by tacomafuji | 2019-08-09 16:31 | TACOMA FUJI RECORDS | Comments(0)